機巧奇傳ヒヲウ戦記/オリジナル・サウンドトラック1(1/3)

Track 1. ヒヲウの夕暮れ

後々バラエティ番組にも使われた名曲。その名の通り、夕暮れ。笛の音から始まる音色は、懐かしい集落の原風景、あるいはヒヲウ達の故郷・蓬莱寺村を想起させる。全体的に優しくノスタルジックなメロディー、穏やかで活気が盛んだった機の民に相応しい。旅先の列車の中で聴きたいというか、旅行の際は必ず聴いてます、当方。

アバンの他に次回予告に使われることが多いですが、25話と最終回のクライマックスで使用されたシーンを今見返すと、メロの哀愁も相まって涙が溢れます。
「自分たちの祭りのために炎は舞う」「ただ笑ったり、泣いたり、ご飯食べたり、そういう普通の生活」双方のつながりが彼らの運命を「戦のために危うきものになる」ではなく、「平穏のために前を向いて歩む」というテーマにマッチして、鞍馬山の景色というか自然と調和することによってより一層沁みる。
彼らには平穏が訪れてほしいと思う一方、平穏のために炎は動く。戦そのものではなく、戦を防ぐため。同時に、その先に平穏があるからこそのからくりの旅は楽しい。そんな思いがこめられているのかなとこの歳になって思います。炎の姿が現れた瞬間、一気に涙腺が崩壊。好きだ。大好きだ。

Track 2. ヒヲウのテーマ

言わずと知れたOP。機巧と炎、風陣、新月藩、幕末の志士達、そしてヒヲウ達・機の民。それぞれにある生き様は、種類は違えどみんな熱いと思わせる熱血サントラ。歌はなく、演奏とメロに合わせて「ヒヲウ~」と叫ぶ声。あとは何言ってるかは何度聴いてもわからないのですが、独特の合いの手らしき声も印象深い。

OPアニメは躍動感あふれるヒヲウらしい軽快な動きが終始あります。駆けるヒヲウから始まってタイトル、物語を取り巻く人々をクローズアップしたコマとこれからはじまる旅の情景、機巧じかけの内部で駆け回るヒヲウ、炎と風陣の対峙、そして故郷に思いを馳せながら涙を流すヒヲウ一行…OPだけでもドラマが深い。
最終回はヒヲウではなく、才谷が駆けるところからこれまでの彼のドラマを物語るアニメーションが描かれてましたね。坂本龍馬の寺田屋事件はリアルタイムで初めて知ったのも、この一幕だったりします。

Track 3. 険しい旅

ドラムとギター・ベース音が印象深い一曲。ところどころわざとはずしたような音がしますが、それが一層複雑な印象を与えてくる。旅の中でのヒヲウ一行の苦しい胸の内を語りかけてくるようで、過酷な旅で苦難にぶつかる彼らに励ましを送りたくなる。

個人的には特に14話でのヒヲウの心情にエールを送りたくなる。佐幕派・尊攘派…それぞれ己の信念のために志を貫く人々によって移り変わる時流の中に翻弄されつつ、「皆嘘ばかり。何を信じればいいのか」と思い悩む。尊攘の志の中、その信念のままに武士として散った有坂。獅子王からヒヲウ一行を助けるため、思い切った行動に出て正体を明らかにする雪。
さまざまな信念と覚悟を持つ人々を目の当たりにする中で、機の民の真実を知ったヒヲウ。「自分にも命を懸けてできることがある」ではなく「テツも皆も助けたい」という、ある意味信念を新たにする一頁だったようにも思えます。

Track 4. 戦士の休息

弦楽器(ギターとかベース辺りか?)と和楽器の調和がなんともノスタルジック。「からくりは祭りのために用いるべし」の信条を持つ機の民に合わせてるのか、晩夏の夕焼けを想起させるようなイメージの曲が多いのがヒヲウかなと思います。子供の頃に見た風景を見ると一層沁みる一曲です。大人といわれる今では、「今日も一日頑張ったな」という時に聴きたいところ。

使用されたシーンとしては、4話のからくり勝負でケンカして壊したヒヲウのからくり人形を自分の手で直すシシと、それを見つめる原田。自分の手で壊した時の、シシの目を開きながらも虚ろ気な表情が忘れられない。
自分に出来る事は人形を直すことだけ。人形ではなく、人だったら直すことはできない。原田はシシが敵討ちをしなくてよかったとだけではなく、彼の胸中を察していたのもあって「正直言うとホッとした」という言葉だったのかも。
ヒヲウの方もサイの呼び止めを聞きながらも、ゼンマイを巻いたりしかけを調べるなどの口実をつけてシシの帰りを信じて待つ。シシを思うヒヲウへの、サイの温かいまなざしが沁みる。

Track 5. 旅の景色

サントラ担当のヒートウェイブさんは「ヒヲウにはバンジョーをよく用いる」と番組終了後の視聴者コーナーで言っていた記憶があります。これもその一曲かな。バンジョーの音色が賑やかながら爽快な曲。終始繰り返されるメロに飽きがこないというか、海の潮風を受けている気持ちになります。

というのも、1話の船上でのシーボルト親子とジュヌビエーブの会話シーンが情景として一番合ってるように思えたので。思えば10話のバートさんの時もそう。異国人の海の向こうへ思いを馳せる胸中ってこの曲のようなイメージなのかなと。
とはいえ会話内容は結構複雑。いや、初っ端からドイツ語だからじゃなくてですね(すぐに日本語で巻き戻し&再生されます)。異国の脅威というか、日本の行く末を案じているような内容。
その一方、彼らに出くわしたヒヲウとシシに、30年前に来日した時の子供たちのことを「あの頃と変わってない」と思い出すところには、のちのストーリーを思うと安堵します。余談ですが、4話アバンのマスラヲ・才谷の黒船見物もここら辺を意図していたように今となっては思えます。

Track 6. ヒヲウのロックンロール

名前の通りロック調なのですが、メインにはブルースハープを用いてるのかな。ギターやドラムも軽快で、躍動感じるリズムが印象深い。元気でアクティブなヒヲウというイメージだと、この曲。情景的にはTrack5.旅の景色が大海原の印象なら、こちらは登山道の印象が強いです。過酷な旅の中で、前を向いていく姿が目に浮かびます。

6話の鎖峠。崖の険しい山道の中、神体形態の炎を押しながら進むも、壊れかかる。この先は子供達だけでは危険・越えられるわけがないと諭す大人達を前に、サイは「越えてみせる、諦めたくない」。出来るではなく、成し遂げなければならない。会いたい人がいるからこそ、前を向かねばならない。修復・改造した炎の力と皆の地道な綱引きで炎本体を引っ張り上げ、ようやく峠を越えた直後の「青いなぁ、空って・・・」サイの第一声がとても好きです。
序盤のヒヲウに出てくる大人達は、優しさや葛藤の中で、子供達のために先を行く事に諭したりする事が多い。5話の勘兵衛・フク夫婦、6話の喜三郎・権十は、彼らのためを思って・・・というある意味尊重と思いやりもあるのが特徴。こうした大人達の壁を乗り越えるというよりも、彼らの事情や想いに理解を示しつつも、それでも自分達の意志を貫く姿勢がヒヲウらしい成長譚だなと思います。

Track 7. 切なさを知らず

ギターとブルースハープの音色がセンチメンタルな気持ちにさせる一方、全体的には旋律が穏やかで優しい。どこかから誰かが語りかけてくるような錯覚にもなります。忙しい時に落ち込んでいたりすると、時には立ち止まって安らいでもいいと思えるような、温もり溢れる一曲。

22話で自分の中に込み上げてくるものに恐怖し悩むヒヲウへの拳骨和尚の言葉にハッとさせられます。とにかく年配とは思えぬほどの腕っぷしだからこそ説得力がある。腕力というかからくりはあってもなくても、心の揺さぶりによって戦は生まれる。思いによって、武器にもなれば豊かにもなる。
わかりやすく明確で胸を打つ答えと「子供は子供でおれ」と諭す拳骨和尚は、才谷不在の中では屈指の理想の大人です。馬関編で尊攘派に翻弄されるヒヲウ一行の思いを最も優先してくれる数少ない人でした。サイもマユも、戸惑うヒヲウへの導きには感謝してもしきれなかったのも頷けます。